僕がタイに移住してきた15年前、財布にはいつもパンパンに現金が入っていました。屋台はもちろん、ちょっとしたお店でもクレジットカードが使える場所なんてほとんどなかったですからね。
それが今やどうでしょう。僕が日常で現金を使う場面は、滅多にありません。ここ数年で、タイは想像を遥かに超えるスピードで、日本以上の「キャッシュレス社会」へと変貌を遂げたんです。
その主役は、スマホを使ったQRコード決済。屋台で売っている10バーツの焼き鳥一本から、スマホで「ピッ」と支払う。これが、今のタイの日常風景なんですよね。
ただ、このめちゃくちゃ便利なQR決済社会を100%満喫するには、一つだけ、とても大きな「壁」が存在します。それは「タイの銀行口座」を持っているかどうか。今回は、この壁をどう乗り越え、快適なキャッシュレス生活を送るか、そのための完全ガイドをお届けします。
銀行口座がない…「不便」を感じるキャッシュレス事情

タイに来たばかりで、まだ銀行口座を持っていない多くの外国人が最初に直面するのがこのフェーズです。この時期の主たるキャッシュレス決済手段は、間違いなく日本から持ってきたクレジットカードになります。
頼みの綱「クレジットカード」
まず、大前提として国際ブランドはVISAかMastercardが必須です。これさえあれば、ショッピングモールやスーパー、ちょっと良いレストラン、ホテルなど、外国人利用が多い場所ではほとんど困ることはありません。
最近ではMRT(地下鉄)の改札でクレジットカードをタッチするだけで乗れたり、Grabに登録しておけばキャッシュレスでタクシーに乗れたりと、本当に便利になりました。
クレジットカードの限界
でも、クレジットカードでのキャッシュレス決済には、限界があります。それは、屋台、ローカル食堂、個人商店といった場所では、ほぼ使えないということ。
「あ、このマンゴー美味しそう!」と思って屋台に駆け寄っても、使えるのは現金かQRコードだけ。ローカルの人たちで賑わう安くて美味しい食堂に入っても、支払いは現金のみ。
タイの日常に深く入り込もうとすればするほど、「あ、現金がない…」という場面にぶつかるんです。これが、銀行口座を持たない外国人が感じる不便な現実なんですよね。
なぜタイの銀行口座開設は難しいのか?

じゃあ、銀行口座を作ればいいじゃないか、と思いますよね。ところが、これがそう簡単ではないんです。
銀行口座開設の大きなハードル
そもそも、タイで外国人が銀行口座を開設するための大前提として、「滞在許可が1年以上の長期ビザ」を持っていることが必須なんです。観光ビザやビザ免除では、まず門前払いされてしまいます。
もちろん、条件に合うビザもあります。例えばビジネスビザや、50歳以上が取得できるリタイアメントビザ、大学や語学学校に通う学生ビザ。これらのビザがあれば、口座開設は可能です。
でも、考えてみてください。50歳未満で、働く予定や学校に通う予定もない人はどうなるのか? 最近話題のDTV(デジタルノマドビザ)も、滞在許可が180日間のため、この「1年以上のビザ」という条件を満たせず、原則として銀行口座は作れないのが実情です。
有力な選択肢としてのタイランドプリビレッジ

ここで、一つの有力な選択肢として浮かび上がってくるのが、タイランドプリビレッジ(旧タイランドエリート)です。このメンバーシップで得られるビザは5年以上の長期滞在ビザなので、銀行口座開設の条件を余裕でクリアできます。
そのため、年齢や就労、就学といった条件に当てはまらない人にとっては、タイで銀行口座を開設し、あの便利なQR決済社会にスムーズにアクセスするための、非常に現実的な選択肢の一つになっているわけです。
QR決済「PromptPay」で真のキャッシュレス生活

さて、晴れてタイの銀行口座を手に入れた瞬間、あなたのキャシュレス決済ライフは劇的に変わります。
タイのQR決済といえば「PromptPay (プロンプトペイ)」
タイのQR決済を支えているのが、この「プロンプトペイ」。これは政府が推進する統一QRコードの規格で、どの銀行のモバイルアプリからでも、お店に置いてある同じQRコードを読み取って支払える仕組みです。
その普及率は本当に驚異的。バンコクの都心はもちろん、地方のどんなに小さなお店、市場の屋台、なんなら路上でお供え物を売っているおばあちゃんまで、QRコードのステッカーが貼ってあります。もはや、QRコードがない場所を探す方が難しいくらいです。
QR決済が拓く、ストレスフリーなタイ生活

このプロンプトペイを手に入れたことで、これまで現金しか使えなかった、あの屋台のマンゴーも、ローカル食堂の美味しいカオマンガイも、全部スマホ一つで「ピッ」と支払えるようになります。流しのタクシーの運転手さんが、自分のスマホに表示した個人QRコードで支払いを受けるのも日常茶飯事。
友人同士でお金を送り合うのも、電話番号を入力するだけで手数料無料で一瞬。もう、面倒な割り勘で小銭を探す必要もありません。日常生活で現金が本当にいらなくなる。この解放感は、一度味わうと元には戻れません。
まとめ
タイは、一足飛びにQRコード決済社会へと進化しました。そして、その便利な社会を最大限に楽しむための鍵が、「1年以上の長期ビザ」に基づく「タイの銀行口座」であることは、もうお分かりいただけたかと思います。
プロンプトペイを手に入れて、屋台でスマートに支払いをする。そんな快適でストレスフリーなキャッシュレス生活を、ぜひあなたも実現してくださいね。

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